お知らせ

第56回日本リハビリテーション医学会学術集会 に参加しました!

今回の学会発表ではニューロリハビリテーションや再生医療についての報告が多くされていました。 ニューロリハビリテーションの報告では脳卒中の麻痺回復についての生理学的な知識の講演がされ、改めて学ぶことができました。また経頭蓋磁気刺激の効果として脳卒中後のリハビリテーションとして併用することで麻痺肢の機能を改善するだけでなく、磁気刺激をあてる部位を変更することで疼痛緩和や意欲向上にも効果があることを知ることができました。 再生医療については、症例報告が印象的で急性期の脊髄損傷症例(頸髄5番の完全損傷症例)に対して間葉系細胞移植を行い、その後急激に回復し歩行が可能になるまでになった報告がありました。その他、脊髄損傷13症例に間葉系細胞移植を行い、効果を得たという報告がありました。再生医療後の回復にはリハビリテーションとの併用が必要という意見が多く、具体的なリハビリ内容として運動学習をすすめる反復練習が必要で、プログラムを標準化していくことが重要という意見がありました。 磁気刺激の新たな活用方法や再生医療後のリハビリテーションなど、新たな知見を得て、これからのリハビリテーションを考えるきっかけになりました。 (理学療法士 S)   ■当学会にはグループ内からも多数参加しました。 ●京都近衛リハビリテーション病院 理学療法士 Y  詳しくはこちら ●御所南リハビリテーションクリニック 理学療法士S 詳しくはこちら  

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【外部発表のご紹介】グリーン・ファーム・リハビリテーション®における効果について~身体機能の改善に必要な実施頻度に着目して~

2015年から本格的に始動し、今では多くの患者様にご参加いただくようになったグリーン・ファーム・リハビリテーション®。活動が本格化した当時から大学病院、企業との共同研究事業として効果の実証に向けた研究活動にも取り組み院内外の学会などでも少しずつ成果発表を重ねています。 今回は2019年2月に開催された第6回京都府作業療法学会、2019年2月に開催された第13回京都大原記念病院グループ研究大会で発表した『身体機能の改善に必要な実施頻度』に着目しまとめた演題をご紹介します。 ※本記事の最下部より抄録がご覧いただけます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー グリーン・ファーム・リハビリテーション®における効果について ~身体機能の改善に必要な実施頻度に着目して~   2015年からグリーン・ファーム・リハビリテーション®のリハビリ効果について研究活動を行っています。2017年の研究では、脳血管障害により認知機能・前頭葉機能が低下した方にグリーン・ファーム・リハビリテーション®を実施した結果、前頭葉機能・精神機能面(活気)への効果がみられました。 農林水産省の報告では健康な高齢者が農作業を実施することで運動効果が得られるとあり、グリーン・ファーム・リハビリテーション®は身体機能面の改善にも効果が期待できると考えました。また、グリーン・ファーム・リハビリテーション®を実施するにあたり、身体機能の改善に必要な農作業の実施頻度は明らかでないため、改善に必要なグリーン・ファーム・リハビリテーション®の実施頻度を明らかにすることとしました。 今回の研究では、握力・バランス能力・歩行スピードについて、グリーン・ファーム・リハビリテーション®の実施群と未実施群の比較検討を行いました。対象は発症から3ヶ月未満の脳血管障害で運動麻痺を呈した男女4名です。実施群は68歳、69歳の男女2名、未実施群は76歳と86歳の男性2名です。 4名とも運動麻痺は軽度で、歩行が可能です。農作業は、種まき、誘引、間引き、水やり、草引き、収穫のいずれかを1回40分、週3~4回の頻度で1ヶ月間実施し、握力・バランス能力・歩行スピードの変化の確認と日常生活の観察を随時行いました。結果は、実施群は未実施群と比べバランス能力で良い結果がみられました。不整地での作業やリーチ動作がバランス能力の向上に有効であったと考えています。 今回の研究では、グリーン・ファーム・リハビリテーション®の効果として、従来のリハビリテーションに加え、複合的な身体機能が求められるグリーン・ファーム・リハビリテーション®を週4回40分/日の実施頻度で行うことで、握力、バランス能力、歩行スピードの改善がより得られやすいことが示唆されました。しかし、対象者の属性に差があることや事例数が少ない検証であり実施頻度の比較までは至っていないため、今後はその点もふまえ、引き続きグリーン・ファーム・リハビリテーション®のリハビリ効果について検証していきます。   ■抄録はこちら 第6回京都府作業療法学会 こちら 第13回京都大原記念病院グループ研究大会 こちら   ※写真は2019年4月の作業風景であり、本演題とは関係ございません。 ※グリーン・ファーム・リハビリテーション®は、医療法人社団 行陵会の登録商標です。

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ドクター登場!木村泉医師(内科) 「音楽療法とモ-ツァルト療法」

今春、着任された京都大原記念病院の木村泉医師(内科)のコラムをご紹介します。 音楽療法とモ-ツァルト療法 近年主に薬物や手術を使う通常の医療に対し、薬物や手術等に頼らない代替医療が盛んに行われるようになった。代替療法には嗅覚刺激を利用したアロマセラピ-、視覚を利用したカラ-セラピ-、その他多数のセラピ-が行われるようになったがその内容は玉石混合である。 一般に普及しつつある療法の一つに音楽療法がある。音楽療法とは音楽を用いた様々な療法の総称である。音楽療法は大きく分けると音楽に合わせて歌ったり踊ったり楽器を演奏したりする能動的音楽療法と音楽を聴くことを主とする受動的音楽療法に大別される。いずれもストレスやストレスを起因とする病気等の補助的治療として有効であると言われている。能動的音楽療法は適切な音楽療法士のもとで行われる必要があるが、受動的音楽療法は方法がわかれば各個人で施行が可能である。 受動的音楽療法の中で少し特殊ではあるがモ-ツァルト療法というのがある。これはモ-ツァルトの様々な音楽を聴くことによりストレスに起因する体調不良や病気を改善できるというものである。モ-ツァルト療法は埼玉医大短期大学名誉教授(専門は免疫学)で私の友人でもある和合治久氏がその有効性を提唱、研究成果を公表されている。 氏によるとモ-ツァルトの音楽には4000Hz付近の高周波数の音が含まれるものが多くこの作用で自律神経の不調が是正されるとのことである。従ってその効果は音楽そのものと関係が薄いとのことである。一般的にはモ-ツァルトの何曲かあるバイオリン協奏曲等が有効であるとのこと。結果心身をリラックスさせるベータ・エンドルフィンやメラトニンなどのホルモン様物質の血中での増加、NK細胞等の人体に有用な免疫細胞の活性化をもたらすとのことである。またモ-ツァルトの音楽を30分程度聞くと唾液中のIgA(免疫グロブリンで抗ウィルス活性がある)が増加することが証明されている。その結果体調不良改善やや感染症予防が期待されるようである。 CD等の音源があればどなたでも簡単にできるので、ぜひ一度お試しされたらいかがでしょうか。   【Profile】 木村泉(きむらいずみ) 日本循環器学会認定 循環器専門医 NPO法人 日本ホリスティック医学協会 理事 日本臨床音楽研究会 理事    

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副院長の三橋尚志が、一般社団法人回復期リハビリテーション病棟協会 会長に就任しました!

京都大原記念病院 副院長の三橋尚志医師が、2019年5月16日付けで一般社団法人回復期リハビリテーション病棟協会(以下、協会) 会長に就任しました。今回はその記念インタビューをご紹介します。   ―まずはこの度の会長就任おめでとうございます。率直な心境をお聞かせください。   大役を仰せつかり身の引き締まる思いですが、背伸びをせず自分ができることをしっかりとやっていきたいなという気持ちです。 協会には2003年から理事、2013年から常任理事として関わって来ました。協会としてはこれまで、診療報酬や実態調査の分野などに注力して来ていましたが、自分自身もこれまで関わる事の多かった「教育・研修」面をより一層充実していけるようがんばりたいと考えています。     ―当院は一般病院、老人医療、リハビリ医療へ回復期リハビリへと転換してきました。こうした転換を振り返るとどのように感じられますか?   私は1982年に医師になりました。当グループのスタートとほぼ同じ時期です。縁あって1991年に当院に着任した当初、病院としては「老人医療」が中心でした。 診療の中心は合併症を予防し、療養を支援することでした。しかし包括的なサポートが必要ななかで出来高制でしか対応できなかった点については「老人医療の限界」「出来高制でのジレンマ」も感じていました。 90年代から介護力強化病棟、完全療養型病床群が生まれ包括的に対応する仕組みが生まれ始めました。92年にリハビリテーション総合承認施設として基準をクリアしたことも非常にタイムリーだったように思います。(その後、2000年に回復期リハビリテーション病棟の制度化と同時に同病棟へ)私の専門は整形外科ですし、かねてからリハビリテーション(以下、リハビリ)には興味がありましたのでリハビリ医療を中心に展開するという方針には手放しで賛成しました。   ―当時、いろんな苦労や驚きなどはあったのではないでしょうか?   苦労した点を一言で言えば「人集め」です。病院として打ち出そうとする特徴の「リハビリ」の認知も低く、リハビリのために入院するという概念がありませんでした。急性期病院など医療関係者においても同様です。こうした背景もあり、患者さんにしても、看護師などのスタッフにしても集めるのはとても大変でした。 私自身も「リハビリの底力」に驚かされました。その当時、高齢者のリハビリはあまりクローズアップされていませんでしたが、大原でセラピストがやってくれていることを目の当たりにして「ここまでよくなるんだ」と驚いたのは今でも覚えています。 日本は平均寿命が世界一、医療レベルも高い水準です。しかし、当時は寝たきり患者も世界一多かったのではないかと思います。国もこれを背景に、90年代前後からゴールドプラン(高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略・1989-)、新ゴールドプラン(同・1991-)で「寝たきり老人ゼロ作戦」などの施策を展開されました。そのタイミングでの転換であったので、国の施策ともマッチしたものであったと捉えています。   ―現場では医師や、看護師、セラピストに混乱はなかったのでしょうか?   特に看護師はリハビリによって実際に状態が良くなる様子を近くで目の当たりにして意識が変わっていったように思います。 当時私を頼って手術を受けに大原に入院していただいた一人の患者さんからお叱りをいただいたことが印象に残っています。手術後にT字帯ではなくオムツを付けられたことで「こんな年寄り扱いして、こんな病院二度と来ない!」と強く言われたのです。 それまで寝たきりの患者様が多かった病棟では当たり前にしていたことも、目的や意思を明確に持って手術やリハビリを受けに来られている患者様にとっては相当のショックであったようです。以降は病棟内でも意識を変えて、看護師を中心に工夫してもらいました。有難いことに、その患者さんはその後も大原で入院して手術を受けられています。   ―そうした過程を経て現在の姿に至る京都大原記念病院の強みについてはどう捉えていらっしゃいますか?   当院は市街地から離れていて、人口が少なく、建物も老朽化してきている・・・決して恵まれた環境ではないかもしれません。 その条件下で、急性期病院などから紹介をしてもらうためには確実に結果を出していく事が必要でした。また、そもそも医療人として、わざわざここに来られた患者様に少しでもよくなって退院してほしい。そのような思いで取り組んで来ました。 当時紹介していただけたのは重症度の高い方や、認知症の方など難しいケースがほとんどでした。しかし、チームで協力して乗り越え、結果として現在まで受け継がれるノウハウが培われました。重度者や認知症に対する対応はいずれの職種も秀でていると思っています。   ―現在でこそ定着しているチームアプローチですが、そこにいたるまでの背景はどのようなものだったのでしょうか?   施設基準としてではなく、密にリハビリを実施しようとすればそれ相応にマンパワーは必要となります。当時は人手が少ないなか、みんなでなんとかやっていました。セラピストがおむつ交換や排せつ介助に入るなどもしていました。みんなで様々な苦労を乗り越えて来たことは、現在のチームアプローチの始まりだったと思います。 その頃、ある来客から「This is none of my business.(これは私の仕事ではありません)」という言葉を紹介してもらいました。例えば受付のスタッフが病棟を歩いていた時に患者さんから「●●してほしい」と声を掛けられた時に、「それは私の仕事ではありません」と断るのではなく、できる限り対応する、もしくは対応できるスタッフに伝達して要望に可能な限り応えるようにすることも大切であるという意味でかけられた言葉(皮肉)でした。 病院のような専門職集団では、つい自分の仕事の領域をつくりがちになります。しかしこの言葉もきっかけにチームで対応する精神が大切であると思うようになり、今でも学卒新人向けの院内研修などで必ず紹介するようにしています。 心がけという意味では、挨拶もその一つです。一人一人が職員として意識を持って顔を上げて挨拶することを、その当時から徹底しました。現在でも来客の方にお褒めいただくことが多く、誇らしく思っています。   ―特にカンファレンスなど医師がほぼ100%参加し、チームアプローチの象徴と思っています。当時からそのような雰囲気だったのでしょうか?   最近でこそ、カンファレンスにほぼ100%医師が参加していますが、はじめからそうだった訳ではありません。 カンファレンスは普段の患者の状態や様子、治療やリハビリの進捗、状態などを共有し、その後の目標や計画を検討する場ですが、回復期リハビリ病棟へ転換した当初は「他の仕事(検査など)があるので」などを理由に医師の参加は非常に悪かったです。基本的には意識の問題で、私自身もそこまで意識して参加できていませんでした。 しかし、ある家族から「なぜここに主治医がいないの?」と言われたことがありました。今思えば、カンファレンスに対する自分の意識を変える最初のきっかけだったかもしれません。医師の基本的な認識としては「医療は治療をするもの」という認識があったこと、そもそも回復期リハビリへの理解が乏しかったことも参加の悪さの背景にはあったと思います。 常々思うのは「理念なきリハビリに未来はない」ということ。当院での理念は「自立支援」に尽きます。この理念を真のものにするためには、より生活に踏み込んだ関わりが必要です。カンファレンスへの医師の参加は必須と考え、15年ほど前に業務命令でカンファレンスを実施する夕方に救急対応以外の医療行為は入れないというスケジュール管理を徹底しました。それから医師の参加は定着し、現在では100%参加することはもちろん、医師がカンファレンスの司会をしています。   ―近年、回復期リハビリ病棟は量的には整備されつつあり、今は「量」から「質」へと重点はシフトしてきている。   2008年に診療報酬で「在宅復帰率」が導入されて以降、次々と「質」の評価が取り入れられました。2016年に導入された実績指標(FIM)は素晴らしい仕組みですが、それを上げることが目的ではなく、あくまで目的は患者自身の状態が良くなり家族の介護負担が軽減することであることが第一義であって、実績指数を達成することが目的ではありません。 客観性を持って評価することが大切であり、実績指標は浸透して然るべきです。目的を間違えないようにしなくてはいけません。病院スタッフ側もこの指標に振り回されることはあってはならないと思います。   ―最後に、この記事をご覧頂いている方にメッセージがあればお願いします。   一人の医師として、さまざまな医療現場を経験し、常々「医師は患者さん、スタッフに教育してもらっている」と痛感しています。これは個人だけでなく、病院も同様です。様々なご意見やご助言をいただくからこそ、日々向上していけると考えています。 幸いこれまで多くのご指導や、ありがたい評価もいただきながらこれまでやってこれました。全国には志高く、さまざまな取り組みをされている医療・介護現場はたくさん存在しています。そうしたところからも多くを学び、現状に満足せず日々向上を目指して行きたいと思います。 ぜひ、これからも細かな部分から忌憚のないご意見をいただければと思います。今後ともご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。       【Profile】 三橋尚志(みつはしたかし)   ■役職等 京都大原記念病院 副院長 京都大原記念病院グループ 医療連携室 室長 一般社団法人 回復期リハビリテーション病棟協会 会長   ■資格等 日本リハビリテーション医学会指導医 日本整形外科学会指導医 日本リウマチ学会指導医

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今年もおいしそうに焼けました!集団アクティビティ訓練「ピザ作り訓練」

リハビリテーションの一環としてピザ作りに挑戦する「集団アクティビティ訓練~ピザ作り訓練」を5月23日、京都大原記念病院で開催しました。   ピザ作りイベントは体の現状把握に加え、実際に調理を行うという行為の中で潜在能力を発見し、さらに患者相互の交流も図る狙いで毎年開催しています。京都大原記念病院で日々リハビリテーションを受けている患者7人と担当の療法士、管理栄養士など計約20人が参加しました。   訓練は午前中は生地作り、午後のトッピング・焼きの2部構成で行われました。午前の部の生地作りは約1時間、担当療法士の補助のもと全身を使ってしっかりとこねていただきました。4時間ほど寝かした後、午後の部として再集合し、生地を伸ばしてソースと自家菜園で獲れたサヤエンドウやトマトなどを思い思いにトッピング。自家菜園の横に設けた石窯でじっくりと焼きました。徐々にスタッフも経験を積み、とても美味しそうに焼き上がりました。   「ピザを作って食べる」という明確な目的に向けて、楽しそうに、また意欲的に参加されている参加者の姿がとても印象的でした。晴天に恵まれた自家菜園のテントで、自然を感じながら食べる一から作ったピザは格別の味だったようです。とてもおいしそうに召し上がっておられました。  

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【外部発表のご紹介】多職種のチームで連携し、症状の悪化を防ぐことができた症例

日々提供するリハビリテーション医療がより良いものとなるよう、様々なテーマで各職種が研鑽に努め、学会などでの外部発表などに取り組んでいます。本日はその一例として当院の看護師(所属は研究当時)が発表した「 NICD(生活行動回復看護) 」をテーマとした演題をご紹介します。多職種のチームで連携し、症状の悪化を防ぐことができた症例について報告しています。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 肺野への微振動を与えることの効果について ~重症肺炎にチームで取り組んだ一症例~   吉田実紅(京都大原記念病院 看護師)※研究当時の所属 第14回日本ヒューマン・ナーシング研究学会 2018年10月   はじめに 重症肺炎、無気肺※1を発症し人工呼吸器を装着された患者Aさん(50代後半・男性)に対し、肺本来の機能や仕組みの復活を期待し、肺への微振動を実施しました。今回はNICDを導入し、看護計画にもとづいて気道の浄化を積極的にし、また療法士との呼吸理学療法や、多職種チームでのアプローチを実践したことにより症状の悪化を妨げた症例を経験しましたので報告します。 生活行動を自立へと導くNICD(生活行動回復看護) 患者様のできることを引き出す 症例は当初、脳出血後遺症のリハビリテーション(以下、リハビリ)を目的として入院されましたが、胆のう炎を併発したことから、一時転院となり、治療を経て再度リハビリ目的で入院されました。再入院当時、両側肺炎、無気肺※1となっていたことから、人工呼吸器を装着することとなりました。主治医からは薬物治療、呼吸理学療法と同時にNICD※2開始の許可が出ました。 NICD※2導入にあたり、まず患者家族へは技術の内容と何らかの悪化のきざしを認めた場合はただちに中止し、主治医が対応することを説明、同意を得て、2017年4月~2017年8月の間に実施することとしました。 個別メニューを作成し、NICD※2研修を受講した看護師を中心に理論や実技について病棟内の他スタッフを指導、共有し、統一してできる準備をしました。リハビリを実施する時間を固定し、呼吸理学療法の研修を受けた、もしくは実施経験のある療法士によるリハビリとNICD※2を1日のケア計画の中で効果的に実施できるよう調整しました。受持ち看護師が主体となり、複数人のスタッフで呼吸状態等に注意しながら実施するなど安全面に配慮しながら取り組みました。 安全に最大限配慮し、 バランスボールを用いて微振動を実施 具体的な個別メニューは以下の通りです。 バランスボールを用いて、股関節や骨盤底筋群※3を柔軟にした後、頭の位置を調整して体幹の並びを整え※4、座る姿勢への体位変換の準備をする(図1) [caption id="attachment_285" align="alignnone" width="300"] 図1[/caption] 胸郭運動に必要な胸の筋肉にバランスボールを用いた微振動により刺激を与える(図2) [caption id="attachment_286" align="alignnone" width="300"] 図2[/caption] 半腹臥位に変え※5、バランスボールを用いて背中から微振動により刺激を与える(図3) [caption id="attachment_287" align="alignnone" width="300"] 図3[/caption] 3.の姿勢で、足の裏へも同様に微振動を行い脳へ刺激を与える(図4) [caption id="attachment_288" align="alignnone" width="300"] 図4[/caption] 入院時、A氏は両側肺炎と無気肺※1の状態で他の呼吸疾患も併発されていました。当時の検査では、白血球数が異常値(WBC※6 12,400/µL・成人の基準値:4,000~9,000/µL)を示し、また必要な栄養素が不足している状態(アルブミン値2.7・低栄養)でした。 入院3日目からNICD※2の介入は入院3日目から開始し、療法士による呼吸理学療法と同時にバランスボールによる微振動を実施しました。 入院5日目には個別メニューを作成し、病棟スタッフ間で共有し、以降は毎日実施しました。 こうした経過を経て、入院8日目には無気肺※1が改善され、2週間目には人工呼吸器を離脱、インスピロン※7へ変更することとなりました。この時点での白血球数(WBC※5 )7,200/µL、アルブミン値 3.2、血中の酸素濃度を示すSpO2 は100%となりました。白血球数、血中の酸素濃度はいずれも正常値内。栄養状態も低い水準ではありましたが改善が見られました。 苦手意識もあったが、正しく状態を理解し、 チームでアプローチした結果状態は改善 呼吸には基本的に重力に拮抗した姿勢(直立)を保つことが一番いいとの報告があります。寝かせきりになると呼吸機能の低下は避けられません。今回のように人工呼吸器を装着されている場合などは特にできるだけ背面 を支持しない空間をつくることが呼吸を助けることになります。 また、急激に状態が悪化した時に呼吸ケアを早期、かつ様々な職種がチームとして介入することで、たとえ人工呼吸器装着となっても早期の離脱や二次的障害発生率が下がり、入院日数の短縮が図れたとの報告もなされています。 これまでは人工呼吸器に対し、苦手意識や体を動かすことへの恐怖があり積極的に介入できませんでした。しかし、今回の症例では看護師が中心となって状態を理解し、早期段階から背部への微振動や、療法士らと協同で呼吸理学療法を実施できました。その結果、酸素化が良好となり、痰の排出を促すことで気道の浄化を効果的に行うことができました。また、経鼻チューブからの栄養投与を続けたことで栄養状態が改善し、水分補給もできたことで痰がベタつかず吸引しやすい状態であったことから気道を清潔にすることが出来ました。 治療の効果に加え、早期介入により、血液に酸素が取り込まれやすくなり、無気肺※1の改善と約2週間での人工呼吸器離脱を果たすことができました。チームで集中的に介入し、的確に呼吸状態を観察、評価しながら、呼吸の介助とNICD※2を計画的に実践したことが状態の改善につながったと考えています。 より一層、チームで取り組む NICDの実践へ 看護師は患者の身体の仕組みを知ったうえで障害された機能を代償する・改善できる方法を探します。保健師助産師看護師法では、看護師の業務は「 診療の補助と身の周りの世話 」とされています。これをどのように行うかは自分たちがしっかり考え、実践しなければなりません。私たち看護師の目や手はそれを見つけ、手当てするためにあります。今後、ますますNICD※2により身体の状態が改善され、苦痛から解放される患者さんを増やしていくためチームで取り組んでいきたいと思います。   抄録はこちら ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ※1:無気肺 空気をうまく取り込むことができず、肺がつぶれてしまっている状態   ※2:NICD(Nursing to Independence for the Consciousness disorder And the Disuse syndrome PAtient) 看護手技の一つで患者の生活行動回復看護と定義されています。主に寝たきりや、廃用症候群の患者様の身体的変化を生理学的、病理学的視点からアセスメントを行い、生活行動を自立へと導く、いわば患者様のできることを引き出すことを目指す看護です。   ※3:骨盤底筋群 骨盤を覆うように骨盤の底部分に位置する筋肉   ※4:体幹アライメント 姿勢分析や動作分析などを行なうときの指標・評価の対象。体幹アライメントの失調とは体幹(脊柱)にねじれや左右差があり垂直ラインが乱れている状態。麻痺側の筋緊張の低下から非麻痺側での過剰努力による固定が強まり、左右差がみられる。このために上手く非麻痺側上肢が使えず車椅子の自走や食事がとれなくなること。   ※5:半腹臥位 抱き枕に覆いかぶさるような姿勢(イラスト参照)。人工呼吸器を装着されていたため、体位変換は2人以上で行い気道確保の確認、気管挿管チューブの深さや位置、患者の表情や状態を確認しながら、同時に吸引の準備もして行いました。   ※6:WBC(white blood cell) 白血球数。個人差が大きく、また同じ人でも1日のうちに数値は大きく変動するが異常値時には様々な疾患が考えられる。高値の時に考えられる疾患に肺炎などがある。 (参考)基準値 成人 4,000~9,000/µL 小児 6,000~10,000/µL 幼児 6,000~18,000/µL 新生児 9,000~25,000/µL   ※7:インスピロン ベンチュリーマスクのことで、マスクのように装着して使用します。一定の酸素濃度を維持しながら酸素を送ることができる機器となります。

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滋賀県草津市山田学区社会福祉協議会の皆さまが視察にご来院されました。

滋賀県草津市山田学区社会福祉協議会の皆さまが京都大原記念病院へご来訪され、農業をリハビリテーションプログラムに組み入れたグリーン・ファーム・リハビリテーションⓇの視察をされました。   琵琶湖岸に位置する同地区は人口7,800人ほど、高齢化率約30%と高い水準にあります。地区内の集まりでも「健康をどのように維持していくか」は常に話題にあがるそうで、ご来院の皆さんも積極的にウォーキングなどの運動に取り組まれています。しかし同時に、健康を維持していくうえでは運動だけでなく「社会参加も大切」とよく言われます。同地区は農業を営む方の多い地域であり、そうした側面で農業を関連付けていくことができないかと考え、当院の取り組みにヒントを求めて今回の視察に至りました。   当日はグリーン・ファーム・リハビリテーションⓇを担当する木村彩香医師(京都大原記念病院 神経内科)、作業療法士、農地運営スタッフらがご一行を案内しました。   農業が本職の方も多く、実っていたエンドウマメを手に「これはゆがいて食べるととてもおいしい」など会話を弾ませながら、当院での取り組みを視察されました。参加された方からは、「特別なことでなくとも、種をまくところから、育て、調理し、食べるまで自然の流れを感じながら、楽しく健康を維持できればそんな素晴らしいことはないね」と共感のお言葉もいただきました。   地域事情を交えた意見交換に、当院としても学ばせていただく機会となりました。このような交流も大切に、取り組みを発展させていくことができればと思います。

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【看護の日特集-若手看護師の想い-】 あの時わたしにできたこと

5月12日は近代看護を築いたフローレンス・ナイチンゲールの誕生日にちなみ制定された「看護の日」でした。看護の心、ケアの心、助け合いの心をだれもが分かち合い、育むきっかけとなることを目指して制定されました。 今回は、この日にちなみ京都大原記念病院の回復期リハビリテーション病棟で日々奮闘する若手看護師に、印象深かった経験についてふり返ってもらいました。ぜひご覧ください。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 私が看護師となって2年目のある日、担当していたY氏(当時80代・男性)を看取りました。Y氏は肺炎後の廃用症候群※1で入院され経鼻栄養をしていました。奥様の待つ自宅に帰る事を目標にリハビリに励まれた結果、退院日が決定しました。Y氏も「やっと帰れる」と満面の笑みをこぼされました。 しかし、退院日が近づくにつれY氏は食事の量が減り、徐々に状態が悪化してしまいました。退院予定日を迎えましたが状態が悪く延期となってしまいました。その日私は日勤でY氏を受け持ちました。Y氏はあの日の笑みが嘘かのように不安そうな表情をしていまいた。手にはナースコールを必死に握りしめスタッフを呼び「怖い、寂しい、しんどい」と一生懸命に気持ちを伝えてくれました。状態が悪化してから家族の面会はありませんでした。私はこの日の数時間でY氏に死が迫っている事を感じ、何度も何度も訪室しY氏の顔を見て、体に触れて、声を掛けました。Y氏にどう接して良いか分からなかった私にはそれだけしかできませんでした。夕方Y氏に努力呼吸※2が見られました。私はY氏の横に座り、手を握り「大丈夫、大丈夫。みんないるからね。Yさんがんばっているから大丈夫よ。」と声を掛けその後も「吸って、吐いて」と声を掛け続けました。私は先輩看護師に言われ日中の様子を記録に残すためその場を離れました。その数分後Y氏の呼吸は停止最後を看取る事が出来ませんでした。 最後まで一緒にいて手を握ってあげる事、家族と最後に会わせてあげられなかった事色々な想いが1年経った今でも私の中を巡っています。寄りそう看護を続けるなかで分かることもきっとあると思います。この経験も経て、より一層日々のコミュニケーションを大切にしたいと考えるようになり、今も心がけて看護にあたっています。これからも患者様に寄りそう看護を目指してがんばって行こうと思います。 京都大原記念病院 看護師 S ※1:廃用症候群 寝たきりや病後の安静(骨折後のギプスなども)などで活動性が低下することにより、自分で思うように動くことができなくなるなどする症状。   ※2:努力呼吸 患者が必要量の酸素を吸入しようとして、胸をとりまく骨格を大きく動かしながら行なう呼吸。Y氏は、亡くなる前に呼吸がしずらい状態になっておられた。

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【外部発表のご紹介】下肢装具検討会の実態調査

京都大原記念病院の総合リハビリテーションセンター前には、主に理学療法士、作業療法士、言語聴覚士らが学会などで外部発表したポスターを掲示、ご紹介しています。 掲示している演題のうち、今回は当院での下肢装具検討会の実態調査に関する事例をご紹介します。     当院の下肢装具検討会の実態調査 ~下肢装具完成までの日数短縮に向けて~   吉田 新平(京都大原記念病院 理学療法士) 回復期リハビリテーション病棟協会 第33回研究大会 in 舞浜・千葉 2019年2月   脳卒中治療ガイドライン2015では、発症後できるだけ早期から十分なリスク管理のもとに積極的にリハビリテーションを実施することが強く推奨されています(グレードA)。そのうえで、長下肢装具(以下、長下肢)、短下肢装具(以下、短下肢)などを用いることは重要な手段の一つとなります。 脳卒中後遺症患者様などにリハビリテーションを提供する当院でも長下肢、短下肢を導入する方は多くいます。当院では、医師・理学療法士・看護師・義肢装具士・患者・(家族)が集まり必要性や仕様等の検討を行う「下肢装具検討会(以下、検討会)」を経て装具を作製しています。 より一層円滑に装具を作製していくために、まずは当院での実態把握をする必要があると考え、当院での入院から検討会開催までの日数、検討会から完成までの日数の実態調査と、どうすれば日数短縮が可能になるかを検証しました。   今回の対象は2015年4月から、2018年3月までに検討会を経て長下肢、短下肢を作製した脳血管疾患患者130名※1としました。入院から検討会開催までの平均日数やばらつきを算出し、Brunnstrom stage※2、表在感覚障害※3、深部感覚障害※4、高次脳機能障害、認知機能障害、担当理学療法士の経験年数の6項目との相関を検証しました。結果の要点は以下のようになりました。   1.長下肢は概ね入院から1か月以内、短下肢は入院から2ヶ月以内と3か月目以降に作製されている。 2.長下肢の入院から検討会開催までの平均日数は16日、入院から完成までは23日。短下肢の入院から検討会開催までの平均日数は55日、入院から完成までは63日。長下肢の入院から検討会と入院から完成までの平均日数の相関は強く(r=0.905;P<0.001)、検討会が早ければ装具完成が早い。 3.長下肢作製の遅延要因として、深部感覚障害と有意差が認められた。 4.長下肢、短下肢ともに表在感覚や深部感覚に障害がある場合は、ない場合に比べて作製が遅延する傾向が見られた。 5.担当理学療法士の経験年数1、2年目に比べ、3年目以上のほうが作製期間が短くなる傾向が見られた。   以上の結果を踏まえ「長下肢作製の遅延理由」「短下肢作製の傾向」について、以下のように考察しました。   【長下肢作製の遅延理由】 表在感覚や深部感覚に障害のある場合に遅延する傾向があることがわかりました(結果③④)。障害により、正常時と比べて具体的に立った状態での訓練イメージが持ちづらく、また介助の難易度が高くなりやすくなります。そのため、どのような長下肢にするべきか(仕様)、どのようにアプローチするべきかの判断に迷いが生じ、結果として下肢装具作製に必要な判断材料(理学療法士の意見)を医師に提示するのが遅れている事態が推察されました。1、2年目に比べ、3年目以上のほうが作製期間が短くなる傾向も見られたことから(結果⑤)、適切にリーダーや管理者がフォローする体制が必要と思いました。これを念頭に今後、体制を築いていきます。   【短下肢作製の傾向】 短下肢の作製期間は入院から2ヶ月以内と、3か月目以降に二極化しました(結果①)短下肢はリハビリテーション訓練を実施するための補助として(治療用)使う場合と、日常生活を送るための補助として(更生用)使用する場合などに分かれるほか、使用用途や作製理由が個別かつ多岐にわたります。理学療法士の意見がまとめづらく、医師へ下肢装具作製必要な判断材料(理学療法士の意見)提示の遅延に繋がっているのではないかと考えました。病棟生活や退院後の生活での使用用途を可能な限り早期に具体的に想定することが、主治医の早期作製判断に繋がると思いました。   今回の研究により当院の下肢装具作製期間の傾向や、遅延要因等の長下肢、短下肢装具作製家庭の課題への気づきも得ることができました。経験の浅い1~2年目の理学療法士等に対し、医師への判断材料提示に至るまでの考え方や行動、指導することが日数短縮に繋がるのではないかと考えます。今後はこれらを意識し、下肢装具作製・リハビリテーションを遂行していきたいと思います。   抄録はこちら   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー   ※1: 今回の研究では、長下肢作製後、短下肢を作りなおした(カットダウン)した方は対象から除外しています。   ※2:Brunnstrom stage(ブルンストロームステージ) 脳卒中などによる片麻痺患者の運動麻痺の程度を評価するための指標。Ⅰ(完全麻痺)~Ⅵ(ほぼ正常)の6段階で評価される。   ※3:表在感覚 触る・温かい・冷たい・痛い等がわかること   ※4:深部感覚 目をつぶっていても体の位置がわかる・方向がわかる等のこと

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グリーン・ファーム・リハビリテーション® 2019年度シーズンいよいよ本格始動!

5月9日 日頃農業指導いただくタキイ種苗㈱の方も来院されて見守りいただくなか、多くの患者様とともに夏野菜の苗の植え付けと種まきを実施しました。この日扱ったのは、約15品目。トマト、ピーマン、ナスといった代表的な夏野菜をはじめ、成育とともに蔓がグリーントンネルを形成するきゅうり、ゴーヤ、モロッコインゲンなどです。グリーントンネルは各品種の茎が支柱やネットを伝って伸びてトンネルを形成するもので、毎年恒例の夏の風物詩となりました。    日よけとしてだけでなく、下から上へと成長するため車いすの方から、立って歩行できる方まで様々な状態の方に収穫いただける場所となります。また収穫だけでなく、誘引(支柱やネットと茎をくくること)作業などが発生し、グリーン・ファーム・リハビリテーションⓇのプログラムに活かしやすいことから設けている場所です。 [caption id="attachment_651" align="alignnone" width="300"] 茎がネットを伝って伸びる。やがてトンネルへ[/caption] 今後は大きく成長することを祈りながら水やりや成育に合わせて誘引作業などに取り組み、6月下旬からは少しずつ収穫が本格化します。今年も夏が楽しみです!   さて、この日は夏野菜の準備だけでなく、昨年も経験した酷暑対策などについても議論を重ねました。大原だからできる取り組みとして積極的に実施していますが、何よりも安全面が第一です。 かねてから意見交換を実施し、この日は遮光トンネルも設置しました。昨秋から準備した主要地点の温度計や、タキイ種苗㈱からも携帯型熱中症計も提案いただき、より一層安全に活動できる体制も並行して準備、検討を重ねています。 今後も安全を第一に、農業のプロの指導も仰ぎながら大原だからできるプログラムとしてレベルアップを目指して行きます。

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