リハビリマインド_垣田清人院長 (1/3) 「変化に富み、忙しくも充実した急性期時代」
垣田清人医師(京都大原記念病院 院長)に脳神経外科医からリハビリ医療に転身して13年間、見てきたこと、培ったリハビリマインドをテーマに話を伺いました。全3回に分けてご紹介します。
第1回のテーマは「脳神経外科医として過ごしてきた急性期病院在籍時代」の話です。
変化に富み、忙しくも充実した急性期時代
研修後に入職した当時の京都第一赤十字病院は、実は今ほど救急を受け入れている病院ではありませんでしたが、時代とともに病院の役割として救急医療が求められるようになっていきました。私は脳神経外科医として一層活気がほしいという想いを持っていましたので、当時の院長の理解も得て救命救急センター開設の口火を切りました。救急室が本格稼働すると、救急搬送の受け入れ件数は年間500件程度から年間数千件までに増加し、私自身も忙しい毎日を過ごすことになりました。実績が認められ、当時市内の第二日赤、医療センターに続く3番目の救命救急センターとして認可を受けました。余談ですが、認可を受けるには救命認定医の資格保有者2名以上が必要でしたが、その時点では先輩1名しかいませんでした。言いだした手前、私自身も取得することになり、それはそれで大変だったのも良い思い出です。
私の専門は、脳卒中です。第一日赤では「急性期脳卒中センター開設(2001年)」にも携わりました。開設の目的に、脳神経外科と脳神経内科が共同で診療にあたる体制をつくることを掲げていました。当時は、脳梗塞(脳の血管がつまる)は脳神経内科、脳出血(脳のなかで出血する)は脳神経外科が診るという傾向がありましたが、現在は脳神経内科と脳神経外科の診療の境界はほぼなく、共同で総合的にアプローチしています。これを考えると、早い段階で取り組めたことは良かったと考えています。名称の「急性期」は、役割を明確にする意味合いであえて表示しました。
脳卒中治療には、診療科の連携だけでなく多職種がチームで診療していくことが必要と考え、早くから「チーム医療」という言葉も掲げていました。センター開設に伴い、医師が指示するだけでなく、看護師やセラピスト等と定期的に情報共有しながら、チームでアプローチする体制も設けました。目に見える形を作れたことは、意味があったと考えています。またこの頃には、クリニカルパス(診療標準化のために、入院中のスケジュールを表のようにまとめた計画書)も設けて、より円滑にチーム医療に臨める体制を整備しました。「チーム医療」や「クリニカルパス」は現在では当たり前のことですが、それが言われ始めたこの時期を振り返ると、変化に富んでいて忙しくも充実していたなと思いますね。
次世代の成長とともに脳神経外科からリハビリへの転身を検討
京都大原記念病院は、私の第一日赤勤務時代から既に回復期リハビリテーション病棟を標榜(2000年から)していましたが、当時は「老人病院」という認識しかなかったのが正直なところです。患者様を紹介することもありましたが、リハビリ目的というより比較的重症な患者様を療養目的でお願いしていました。2006年に講演する機会があって足を運んだ時に、初めて「リハビリ病院」という認識を持ちました。今思えば、リハビリ自体があまり認知されていなかった時代であり(自分も含め)急性期の医師は「治療を終えたら、その後の指示を出しておしまい」という風潮だったように思います。
そんな私が脳神経外科医からの転身を考え出したのは、50代半ばに入ってからです。この頃は、口(指示やアドバイス)で手術をしていましたね(笑)。手術は丸一日近くかかることもあり、また緊急対応も必要で体力を要します。自身の体力面の変化等も考えれば、次世代の育成は必須でした。外科医が、いつまでも「俺が一番」ではいけないと思います。幸いその頃には若い医師が力をつけていましたので、夜間の呼び出し対応はしていたものの、手術執刀は彼らが中心となって担ってくれるようになりました。その頃、児玉博行理事長からの声かけもあり、転身を具体的に考えるようになりました。
- 【Profile】
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垣田清人(かきたきよひと)
京都府立医科大学を卒業後、2年間東京の大学病院で研修した後に帰京。医局へ入らず、京都第一赤十字病院(以下、第一日赤)に直接入職。京都大原記念病院 院長に就任するまでの約30年間在籍。本人曰く「私は外様なんです(笑)」。
- |資格|
- 京都大原記念病院 院長
- 日本脳神経外科学会専門医
- 日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
- 【連載第2回はこちら】
- リハビリは脳を介して取り組むべきだ
- 【連載第3回はこちら】
- 人生の充実感を探す支援を目指す
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