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【外部発表のご紹介】 現場での「慣れ」の可視化を目指して

京都大原記念病院の総合リハビリテーションセンター前には、主に理学療法士、作業療法士、言語聴覚士らが学会などで外部発表したポスターを掲示、ご紹介しています。

掲示している演題のうち、今回は現場での「慣れ」の可視化を目指そうと取り組んだ事例をご紹介します。

 

NEURO-15対象者8症例の前方リーチでの考察

 

山崎龍之介(京都大原記念病院 作業療法士)

第9回 Stimuration Therapy 研究会 in 福井 2018年8月

 

臨床現場で、手の機能のみを測る評価点数に変化がなかった(FMA※1)のに、手で物を運びやすくなるなど動作がしやすくなったという患者からの訴えがあった。手の機能に変化が無かったにもかかわらず、物品操作に関する検査(ARAT※2、STEF※3、WMFT※4)の向上や、本人の感覚(VAS※5)も向上が見られた。その患者はもう一つの変化として、バランス能力(FRT※6)の向上も見られた。

「手が動かしにくい」というのは手の問題だけでなく、手の動きを改善するためには手だけでなく全身を診ることが必要ということは一般的に認識されている。そのため、自分の領域だけでなく、他領域での評価・検査結果をも鑑みた上で、プログラム構成を検討していく。ただし、これらの解釈過程は経験により培われていく部分が大きく、こと職員教育の場面では座学での講義研修だけでなく、OJTでの直接指導により「慣れ 」をサポートしている。しかし、全てのケースで円滑に進むわけでなく、困難な場面も多い。

このことから、改めてエビデンスを検証し、基準や相関性を可視化することで、今後の診療だけでなく、業務引き継ぎや教育という観点でも活用できるのではないかと考え研究に取り組んだ。

 

今回は2017年3月~11月のNEURO-15症例から、麻痺側上肢を90度前方に上げることができる8名を対象に、FRTをベースにした4種類の前方リーチの結果と、上肢機能検査や主観評価を実施。相関性を探ることを目的とした。

FRT(Functional Reach Test)とは、立った状態で90°前方に上げた手を、体をひねらずできる限り伸ばすことでバランス能力を検査する手法。正常か非正常かを分ける基準値(カットオフ値)は25cm。通常は麻痺が出ていない非麻痺側のみを測ることが多いが、今回は麻痺側と、更に座った状態の非麻痺側、麻痺側を加えた4種類を計測した。

 

入院時、カットオフ値を下回ったのは以下の通り。

立った状態の時、麻痺側で6例、非麻痺側で3例

座った状態で麻痺側で4例、非麻痺側では該当者なし

 

リハビリテーション訓練を経た退院時では以下の通りとなった。

立った状態の時、麻痺側で3例(▲3例)、非麻痺側で2例(▲1例)

座った状態の時、麻痺側で2例(▲2例)、非麻痺側で1例(+1例)

 

全体的にバランス能力の向上が見られると、患者本人の主観(VAS)は対象のうち2例で動きのしやすくなった(手の機能の向上)を感じている結果が見られた。

バランス能力の向上とともに、本人の主観や上肢操作能力が高まる傾向が見られ、上肢機能の評価時は全身的な評価が望ましいことが伺えた。

今回の研究においては、症例数が少なく、各検査とリーチの相関性に統計的な有意差は導きだせていない。しかし、今後は症例数を積み重ね、有効なエビデンスとすることを目標に研究を継続していきたい。

 

抄録はこちら

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※1:FMA(Fugl-Meyer Assessment)

肩がどの程度回るか。肘や手首がどの程度回るか。また手首を回す時に、肩など他の部位も回ってしまっていることがないかを点数表を用いて評価する。上肢66点満点、下肢34点満点の計100点満点。今回は上肢に絞り66点満点で実施。

 

※2:ARAT(Action Research Arm Test)

手を使い、持つ、握る、つまむなどして前後・左右・上下に物を運ぶ、それぞれの動作について完遂度と時間を評価する。

 

※3:STEF(Simple Test for Evaluating Hand Function)

10種のサブテストによる広い範囲の上肢機能障害に対するテストを行います。検査台上で形状や重さ、材質の異なる10種類のパーツを把持・移動・離す一連の動作を左右の手を個別に行ない、それぞれにかかった時間をポイントに置き換えて評価します。

 

※4:WMFT(Wolf Motor Function Test)

布をたたむ、缶を持ち飲む(動き)など、より日常生活上の動作に近い形で手の動きを評価する。

 

※5:VAS(Visual Analogue Scale)

100mmの線の左端を「痛みなし」、右端を「最悪の痛み」とした場合、患者の痛みの程度を表すところに印を付けてもらう手法。今回は上肢機能についての課題に対し、どれくらいできたかを主観で示してもらった。

 

※6:FRT(Functional Reach Test)

立った状態で90°前方に上げた手を、体をひねらずできる限り伸ばすことでバランス能力を検査する手法

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