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【外部発表のご紹介】回復期病棟脳卒中患者の運動機能が日常生活動作に及ぼす影響~退院時におけるFACT・BBS・FMAと運動FIMの関連性~

日々提供するリハビリテーション医療がより良いものとなるよう、様々なテーマで各職種が研鑽に努め、学会などでの外部発表などに取り組んでいます。本日はその一例として当院の理学療法士が発表した「脳卒中患者が効率よく日常生活動作を改善していくために必要な運動療法の検討」をテーマとした演題をご紹介します。

 

回復期病棟脳卒中患者の運動機能が日常生活動作に及ぼす影響

~退院時におけるFACT・BBS・FMAと運動FIMの関連性~

 

  • 久保田一誠 京都大原記念病院 理学療法士
  • 2019年11月リハビリテーション・ケア合同研究大会

 

回復期リハビリテーション病棟(回リハ病棟)では、2016年4月の診療報酬改定で「アウトカム評価」の仕組みが導入され「成果(実績指数)」が明確に求められるようになりました。入院患者の日常生活自立度を示すFIM(Functional Independence Measure)がどの程度の期間で改善したかを指標とし、効率的な効果の発揮が求められています。

今回の研究テーマは脳卒中患者が、効率よく運動FIMを改善していくために必要な運動療法の検討です。

運動FIMとは、日常生活にある食事や整容(身なりを整える)、排泄など13項目の生活動作ができているかどうかを7点満点で評価する指標です。各項目6点以上、合計70点以上で補助具等を用いれば身の回りのことが自分でできると判断されます。

2018年10月から2019年3月までに京都大原記念病院の回リハ病棟を退棟した脳卒中患者87名を対象に、運動FIMと4つの運動機能評価の関連性を検討しました。用いたのは、主に座った状態でのバランス能力の評価(FACT:Functional Assessment for Control of Trunk)、主に立った状態でのバランス能力の評価(BBS:Berg Balance Scale)、脳卒中患者の上肢下肢の機能障害の程度(FMA:Fugl-Meyer Assessment)。これら4つの評価結果と運動FIMの関連性を調査し、どのような運動機能が日常生活動作に影響を及ぼすかを調査しました。

 

全体では、バランス能力の評価結果と運動FIMには関連性が見られ、特に身の回りのことが自立している方(運動FIM 70点以上)は、座った状態、立った状態ともバランス能力は許容範囲以上のバランス能力が必要であり、運動FIMの改善にバランス能力が大きく関係することが確認されました。

さらに、運動FIMを細分化し検証すると、特に座った状態のバランスと身の回りの動作の自立との関連性を確認できました。加えて、体を拭く動作には上肢の運動機能、ズボンやパンツなどの着替えや浴槽への移動には下肢の運動機能も関連することが確認できました。

以上の結果から、静的に立つ、歩く練習をするだけでなく、座った状態での日常生活の動きのバランス練習が重要となることが分かりました。また今回の検討を通して「生活の質(QOL:Quality of life)」と「日常生活自立度(ADL:Activities of daily living)」は必ずしも一致しないこと。状態によっては、運動FIMで検討し、日常生活自立度の向上を図ることが生活の質向上につながるが、そうでない対象者も存在することを再認識することができました。

今後、運動機能(バランス能力や機能障害など)をより細分化した検証を進め、患者様一人ひとりの状態に合わせた運動療法を提供していけるよう取り組んで行きたいと思います。

 

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